士気を高める「まかせる」人使い

印刷の世界では、都市部で働いている職人よりも、地方で働いている職人のほうが、腕が確かだといわれている。 これは、根拠のない話ではない。都市部で働いている職人は、しょっちゅう引き抜きにあって職場が定まらないから、じっくりと腕を磨くチャンスが少ない。それにくらべて地方では、職場が安定しているから、ひとつの工場で、ゆっくりと腕が磨けるというのである。
そのためかどうか、地方の印刷工場では、職人を採用しても、なかなか大きな仕事をまかせない場合が多い。1、2年は、紙刷りやインクの色見といったアシスタント的な仕事しかさせないケースが多いのである。
ところが、若林は、入ってすぐの人間でも、すぐに仕事をまかせてしまう。1、2か月もすれば、一人前に仕事ができるように仕込んでしまう。
それだけではない。その分、給料もちゃんとあげるのである。
最初は10万円からスタートしても、1年のうちには、月給が5、6万円は昇給しているという。年に3回は昇給があるというのである。
こうなってくると、社員のやる気もぜんぜん違ってくる。しかも、さきほど述べたように、どんどん分社化していく方針をとっているから、社長になれる可能性も高い。社員の士気はすくぼる高いのである。5年以内にグループ全体で150億円という強気の売り上げ計画も、そんな社員操縦法があってのことだろう。
ところで、これだけ幅広く事業を展開しているわかさ屋の本社には、営業マンがたった3人しかいないといったら、読者は驚くだろうか。これは、デザインや企画・制作部門がしっかりと営業マンをフォローしているからこそ、できることなのである。もし、営業マンが顧客から注文をとり、細かい提案をして、クレームの処理までする。と1人で全部引き受けていたら、こんな体制は組めないだろう。
これもまた、若林の、「人にまかせる」の姿勢の現れといってよいだろう。