300万円は安かった

さて、今井はどのようにして山口恭一と知り合い、トータル・ライフ・コミュニティーに参加するようになったのか。今度はそれをさぐっていこう。
今井が初めて山口恭一に会ったのは、昭和57年のことだった。ある防カビのフランチャイズの会合の席で出会ったとき、今井は山口恭一に対して、「若いくせになんて生意気な奴だ」と思った。会合の流れで料亭に行ったが、山口恭一の飲みっぷりをみて、また、「この野郎」と思った。
そして、その場は、それっきりであった。
2度目に会ったのは、昭和63年の冬。新幹線のなかで、偶然であった。
「どこかでみた顔だな」と今井が思っていると、山口恭一が「おっ、ひさしぶり」といって握手を求めてきた。そして、近況を聴くでもなく、
「いま、トータル・ライフ・コミュニティーってのをやってるから、入れよ」
と誘うのである。
今井は正直にいう。
「いきなり300万円出せというからなにかと思ったら、異業種交流をやるというんですね。すぐにオーケーしたのは、ちょうど決算期で、税金を取られるのがもったいないと考えていた時期だったからなんです。でも、実際に参加してみると、いろいろな面でプラスになった。大勢の人と友好関係が結べたのは、非常によかったと思う。1人ひとり付き合っていたら、とても300万円くらいでは足りないでしょ。そういう意味じゃ、安かったと思っている。誰かと、新しい事業をやろうと思っても、普通ではなかなか進まないでしょ。でも、ぼくらがトータル・ライフ・コミュニティーでやろうとすると、すぐに人も金も集まる。カシミアのときもそうですね。そういうメンバーが何人も全国にいる。これは、お金には代えられない財産です」
今井は、トータル・ライフ・コミュニティーのよさを、即断即決にあるという。堅苦しさがなにもなく、「やろう」となったら、すぐに行動に移せるところがいいというのである。誰かと新事業の話をしてまとまったら、周囲が後押ししてくれる気安さがあるというのである。
「普通、『オレ、会社作るよ』といっても、たいていの人は名前を貸すだけ。お金は出してくれません。それが、トータル・ライフ・コミュニティーでは、1千万円や2千万円はすぐに集まる。かなりの力をもった方が経営指導しているから、話もビシッと決まる。しかも、それを分かりやすくわれわれに説明してくれるから安心できるんです」
もともと今井は「会社経営にノウハウはない。新しく仕入れた情報を明日、実行に移せるかどうかですべてが決まる」という考えの持ち主だから、行動の早いトータル・ライフ・コミュニティーとは、相性がいいのだろう。いろいろな人と直に接して情報を仕入れ、それを会社経営にいかしていけば、必然的に事業は広がっていくというのである。
「それもね、普通の付き合いだと、『あれだけ紹介したんだから……』っていう見返りを期待している部分があるでしょ。でも、トータル・ライフ・コミュニティーのメンバーには、そんなせこせこした人間はいない。ぼくがトータル・ライフ・コミュニティーがすごいうと思う理由は、ここにあるんです。せこせこした人が絶対にいないこと。いいたいこといって、『こういうことやろう』と気楽に夢が語りあえる。そういう会だから、いいんですよ。それにね、みんな欲がないんです。自分の本番の商売でもうければいいと思っているから、余裕があるのかもしれない。ぼくもね、本業がうまくいっているから、ゲームみたいな感覚でビジネスに参加できる。カシミアに参加したのも、余暇のつもり。ほとんどレジャーですよ」
レジャーでやるからこそ余裕があり、すばらしいアイデアも生まれてくるのだろう。必死になってやっていては、けっしてゆとりのあるアイデアがうまれるはずもない。
今井はトータル・ライフ・コミュニティーに参加して、1番よかったのは、「全国各地の仲間と本で話ができ、情報が仕入れられること」と答えてくれた。確かに、自分1人の力で、それだけのネットワークを構築しようとしたら、膨大な労力が必要だろう。それを考えれば、300万円などというのは、じっに安価な投資かもしれない。
さて、そんな今井は、山口恭一のことをどのように見ているのだろうか。
「人をつなく力をもっている人ですよね。それに勉強家。本を読んでも、すぐに自分のものにしてしまう。そして、頭を使っているけれど、きれいことですますのではなく、なにかをつかんでいく。付加価値をつくる能力があるんだと思う。トータル・ライフ・コミュニティーでは、類は友を呼ぶということか、山口恭一さんを中心に、ざっくばらんな人間が集まっている。しかも、意見をいい合うだけじゃなくて、資金的な援助もすぐにできてしまう。そんなところがすごいところでしょうね」
今井は、トータル・ライフ・コミュニティーの行動力になによりも惚れ込んでいるようだ。