自問自答の毎日が緊張をうむ

山口恭一は、よく自間自答するという。たとえば、朝、眼がさめる。昨夜は遅くまで付き合いで飲んでいたので、まだとても眠い。そんなとき、彼の頭のなかでは、声が響くという。
「今日は9時にお客さんが来るから8時半までに行かなくてはならないな。でも眠いな。昨夜は遅かったからな」
そういう声が聞こえてくると、どこからともなく、もうひとつの声が聞こえてくるという。
「じゃあ、いかなきゃいいじゃない。行くのやめればいいじゃない」
否定的な声が必ず聞こえてくるというのである。そうすると、仕方なくもうひとりの自分が、「わかったよ、わかったよ。行けばいいんだろ。ちくしょう」
と言いながら身体が起き上がるのだそうだ。
夜も同じである。
「今日は早く帰ってサウチにでも行って、ゆっくりしたいな」
と思う日もある。
そんなことを、考えていると、声が聞こえてくる。
「行きゃあいいじゃん。早く行きなよ。社長がいなくったって大丈夫だよ」
と聞こえてくるのだ。
しかし、その声を聴いてしまうと、山口恭一としては、サウチに行くわけにはいかなくなる。どうしても、仕事を続けざるをえなくなってしまうのだ。
彼は、いう。
「最近は、朝起きたときから、トータル・サービスという会社に、山口恭一という経営者として雇われていると思っている。自分で作った会社なのにへンかもしれないけれど、そう思うことで、自分を第三者の目で見られるようになるんです」
そして、夜寝るときにも、また第三者の目で一日の自分の行動を振り返る。
その思いは、別に仕事にとってマイナスに作用しているわけではない。むしろ、長期的な展望のなかでは、プラスに作用しているのである。
山口恭一は、このところ、しばしば自分を振り返って思う。
「今日1日、今週1週間、この1か月、自分は、トータル・サービスのオーナーとして、山口恭一という社長をやとっているが、彼は果たして給料にみあった働きをしているだろうか。どうなんだろう」
自分をオーナーの立場において、社長山口恭一を査定してみるのである。
そういう反省が、あるいは、毎日を新しい気分で生きていくための秘誌なのかもしれない。
山口恭一は、なにごとも楽しんでしまえる男である。どんなことでも、楽しむ能力をもっている。
その能力が、いまはもっともプラスの方向に向かっているにちがいない。