“飲みニケーション”絶対反対

さて、このように、人生の波をかいくぐってきたような山口恭一だが、彼は、あまり部下をバーやクラブに飲みにつれていかない。ともすれば「人が大事」などという経営者は、若手社員を飲みに連れていき、そこでコミュニケーションをはかる“飲み二ケーション”を重視するものだが、山口恭一は違った。
そのあたりが、本音で生きている山口恭一らしいところである。
「サラリーマン時代に、飲みに連れていってもらったこともあるし、最初は嬉しいと思っていた。だけど、何回も行っていると、金を払う人がもてるに決まっている。上司だから、気をつかわなくちゃならないし、そのうえ、上司のダーティーな部分も目にしなくちゃならない。やたらと厳しい上司が、店の女の子を口説いてニタニタしているのなんか見るといやになってしまう」
もちろん、彼も部下を飲みに連れていかないわけではないが、いまでは、それでコミュニケーションをとるよりも、むしろ、昇給を重視する方向にある。飲みに連れていく金があるならば、その分、昇給をしてあげる方がいいという方式に変換してきたのだ。
「偉そうに銀座とか六本木とか飲みに連れていって“やった”なんていわれて、その上司が金払って、そいつが1番モテてなんて、部下にしてみたら、つまらないはずだよね」
山口恭一にいわせれば、上司が部下を知るには1,2年かかるが、部下が上司を知るには3日あれば十分だという。いいところを見せれば、部下はすぐにいい上司だと思うし、悪い面を見せてしまえば、すぐに悪い上司だと思ってしまう。そして、ほとんどの場合、女の子のいるバーやクラブに連れていっては、上司のだらしない部分ばかり目にとまってしまうというのである。
そんなことをするくらいならば、“金一封”を渡して、社員だけで飲みにいかせたほうが、よほど社員が喜ぶというのである。
これは、サラリーマン時代の本音からうまれた、山口恭一の“飲み二ケーション”の原則なのである。
もっとも、そんな山口恭一も、経営者同士の飲みニケーション、は大賛成であるという。毎晩実践もしている。
「会議で堅苦しく話し合うよりも、飲みニケーションのほうがいいんです。トータル・ライフ・コミュニティーの共同事業だって、アイディア会議では提案があるだけで、具体的なアイデアは、飲んでいるときにポンポン出る。そのほうが、面白いアイデアが出てくるんです。ただし、『接待』はダメです。ウチからもやらないし、受けない。『接待』では、面白いアイデアなんか、浮かんでこないですからね。『いい人を紹介しよう』と誘われたならば、すぐに飛んでいきますけどね」
山口恭一にとって、発展的な話のできない“飲みニケーション”というのは、まったく意味がないらしい。