軍勝5分を以て上となす

ここで、ウッドクリーニング事業について説明しておこう。
山口恭一は、ハウスクリーニングフランチャイズで得た教訓をもとに、昭和63年の春から、ウッドクリーニング事業に乗り出した。
これは、トータル・ライフ・コミュニティーの会員である大阪ガスグループの(株)オー・ジー・産業が独自に開発した薬剤を使って、汚れた木製の建材や家具を新品のようにきれいにするサービスである。
自分のところで、フランチャイジーを募集するほか、フランチャイザー本部として、各エリアごとにチェーン展開を希望する企業も募集。各本部にノウハウを提供していくユニークな方式をとっている。そのため、エリアフランチャイザーになれば、各加盟店からロイヤリティーが入ってくるのである。
もちろん、エリアフランチャイザーとして応募すれば、フランチャイジー集めのためのさまざまなノウハウの指導を受けることがきる。
契約書、手引書、施工・営業マニュアル、広告、DM、テレフォンコールセールス、アフターフォロー、フランチャイジーとのコミュニケーション作り、広報、管理など、トータル・サービスが、これまでハウスクリーニングで培ったさまざまなフランチャイズノウハウが、受けられるのである。
エリアは、①全国、②関東地区、関西地区、中国・四国・九州地区、③東海地区、東北地区、九州地区、中国・四国地区、④県人口に200万人までの1県単位、⑤その他、に分かれていて、そのなかから、自社にあったところを選べるようになっている。
このようなユニークなシステムを作った経緯を、山口恭一は、次のように語っている。
「ある方に、山梨県の恵林寺というところに連れていってもらったんですよ。そこに、武田信玄の訓言がある。『凡そ、軍勝五分を以て上と為し、七分を以て中と為し、十分を以て下と為す』というものなんですが、勝ちすぎるのはよくない。半分でいいという教えなんですね。これを見たとき、ウッドクリーニングはこれで行こうと思ったんです。
どういうことかというと、もし、うちだけがフランチャイズ本部となってやると、きっと後で参入してくるところが出てくる。自分だけ伸びていけばいいが、競合相手がきっと出てくると思うんです。それならば、最初から競合相手のフランチャイズ本部を作って、協会にしてしまおう。それで、適性な競合でやっていこう。うちにはロイヤリティーは入ってこないけれど、洗剤だけは、うちから買ってもらうわけだから、それだけでいいじゃないか、と考えたんです。適性競合のほうが、業界全体にパワーがついてきますからね。そのほうがいいんです。もちろん、エリアフランチャイザーになってもらうところは、ある程度力のあるところでなければ困ります。力のあるところが集まって競合すれば、活気が出てきますからね」
自分から競争相手を作りだそうというユニークな発想なのである。
ウッドクリーニングの料金は1平方メートル当たり5千円。30坪の木造住宅で、60万円程度になる。フランチャイジーの開業資金は、権利金など、80万円。エリアフランチャイザーについては、前頁の表の通りとなっている。
現在のところは、まだまだ市場を形成している段階だが、それでも月間の施工は2千万円はある。フランチャイジーも、1年で95社になった。
「ハウスクリーニングもそうですが、ウッドクリーニングも、家の中に入っていくので、ビジネスの可能性がどんどん広がるんですよね。お客さんとの信頼関係が深まれば、訪問販売にも結びつけられるんです。各家庭のデータも集められる」
山口恭一には、ひとつ、ビジネスを始めると、すぐに次のことを考える前向きなクセがあるようである。
また、このウッドクリーニングのフランチャイジーには、協会を通じて交流の機会を設けている。そのため、フランチャイジーが共同でニュービジネスを始めた例もある。実際に、長野県と石川県のエリアフランチャイザーが共同で、ログハウスを輸入して販売し始めているのがそれだ。