まえがき

情報化社会という言葉が使われようになって、ずいぶん長い時間たったような気がする。 たしかに、その言葉通り、現代は情報に満ち満ちている。
テレビでも、新聞でも、雑誌でも、書籍でも、はたまたさまざまな種類のコンピューターネットワークも、日々、いや、毎分毎秒、大量の情報を流し続けている。 無論、役に立つ情報もあれば、まったく役に立たない情報もある。
しかし、大量に流される情報は大量に消費される。ただ、それだけの話だ。 いまあげたような情報源からは、受け手が、どう感じようが感じまいが、一方的に情報が送り込まれてくるばかりである。それ以上のことは、あまり考えられていない。
どうも、ここでひっかかるものがある。
現代の社会は、すでに高度経済成長期のような、少品種大量生産の時代ではなくなっている。多品種少量生産は、大きな時代のトレンドなのだ。情報の分野でも、これを実践しているところはないのだろうか。
そう思って探してみると、最先端の情報戦略を実践している興味深い団体があった。 その名前は、トータル・ライフ・コミュニティー(略称TLC)。 山口恭一のひきいる異業種交流団体である。
この会は、会員同士の交流を通じて、密度が高く、しかも新鮮なナマ情報を流し合っている。だから、大量情報に流されることもない。
山口恭一は、弱冠33歳にして、年商26憶円のハウスクリーニング会社トータルサービスグループの社長である。2代目ではない。自分で作ってしまったのである。それだけでもたいへんな男である。
そして、彼の作ったトータル・ライフ・コミュニティーも、なかなかユニークな情報交流の会である。
なにが変わっているかというと、まず第1にメンバーがユニークだ。全国各地のさまざまな業種の経営者たちが集まっている。それもほとんどがアントレプレナーシップ(起業家精神)をもった、前向きで行動的な、そしてプラス発想のもち主ばかりである。
そしてもうひとつユニークなのが、この会に入会して何かをもらおうとか、何かがもらえるというような期待感ばかりの人間はひとりもいないということ。つまり、まず自らをオープンにして、ギブ・アンド・ギブの姿勢で参加しているというメンバーしかいないのだ。
このふたつの柱のおかげで、トータル・ライフ・コミュニティーの情報は、いつもビビッドに流れているのである。トータル・ライフ・コミュニティーは、山口恭一のすぐれたキャラクターがあって、はじめて形成された集団である。
メンバーのほとんどは、口をそろえたように、山口恭一には、「人と人を結び付ける才能がある」という。その意味でたいへんな男なのである。
山口恭一をよく知っている人々は、彼のことを、さまざまに評している。

「儲けを後回しにして、なにか面白いことをやりたい、なにか自分の納得することをやりたいと考えている人物」
(龍角散・藤井康男社長)

「彼はカリスマじゃなくて、経営者たちのアイドルなんです。これからの時代は、上から押さえつけるようなカリスマには、情報は集まらないでしょう。誰からも好かれ、みんなを楽しませるようなアイドル的存在のところに、情報が集まってくるんじゃないですか。」
(日本のパフォーマンス理論第一人者で実践女子大助教授の佐藤綾子氏)

「損得を度外視して笑顔を大切にする。やはり、そんな基本をもった人のところでなければ、人も情報も集まらないでしょう。情報の基本は人ですからね。人脈を作れない人に、情報は集まりませんよ」
(友&愛・牛久保洋次会長)

「トータル・ライフ・コミュニティーの場合、とくに山口恭一郎さんのキャラクターには、きちんと問題点を指摘しようとする姿勢がある。ときには、他人をけなし合うために集まっているんじゃないかと思うくらい情熱的に議論する」
(チェスコム・篠野中道社長)

「トータル・ライフ・コミュニティーには、既存の交流団体にないエネルギーを感じます。前向きに進もうという姿勢があるので、本音でつきあえる」
(船井総合研究所・和田一廣常務)

どうだろうか。みな口をそろえたように彼のことを称賛して、こんな人物のところにこそ情報が集まるといっている。
最近では、あちらこちらに異業種交流団体と称するものができあがっている。 しかし、それらのほとんどは単なる名刺交換会にすぎない。 ところが、こちらのトータル・ライフ・コミュニティーは、そこからつぎつぎとニュービジネスを誕生させている。じつにパワフルな団体なのである。
この本は、トータル・ライフ・コミュニティーという特異な集団のようすをさぐったものである。 ここのメンバーたちは、営業地域も、業種も、営業規模もまったく違っているのに、じつに活発に情報を交換しあっている。 いや、地域も、業種も、規模も、まったく違うから、ホンネがぶつけられるのだともいえる。 同業者や同郷、同窓の集まりでは、警戒心が先に立ってしまって、なかなか本音がぶつけられないものだ。そのことをよく知っている山口恭一だったからこそ、こういう意団体を作って、メンバー同士刺激しあい、情報を交換しあっているのである。
メンバーたちのひとつの軸は、『情報』である。 全国から集まった彼らが、情報をどのように収集し、どのように生かしているのか。そのノウハウの秘密を解きあかしていこう。

定義がむずかしい“情報”というコトバ

情報というコトバ、誰もがわかったつもりで使っているが、案外定義が難しい。 試しに自分なりの“情報”についての定義を考えてみてほしい。いかがだろう。ぴったりくる定義があっただろうか。案外難しいのではないかと思う。
毎日毎日新聞やテレビ、雑誌y膨大な出版物から流れてくるものも情報であれば、営業マンが足を使ってこまめに集めてきたのも情報。近所の奥さんの四方山話で伝えられるにも情報ならば、データサービス会社や広告代理店に高い金を払って得るマーケティングのノウハウも情報である。
しかし、これらの膨大な情報にはどういうふうに接すればいいのか。何を重要視すればいいのか?  “情報”を、垂れ流し的に耳に入ってくるマスコミの独占物や、のべつまくなしに押し寄せてくるデータの集積と考えているようでは、これについての回答は得られない。

現代は情報社会だといわれている。それについての異論を唱える人はほとんどいない。中世が農業社会であり、近代が工業社会であったのと同じ意味で、現代は情報社会なのである。ところが、農業や工業の定義ならば、だれでも簡単にできてしまうのに、情報となるとこれが難しい。
それは、情報という不定形のモノがもつ必然的な宿命であるようだ。この本は、山口恭一を中心とするトータル・ライフ・コミュニティーという異業種交流団体が、情報をどのようにあつかい、利用しているのかを核にして、人脈ネットワークの効率的な構築と運用を考えたものである。まあ“人脈ネットワークの構築と運用”などと書いてしまうといかにもしかつめららしくなってしまうが、なに、そんなたいしたことじゃない。つまりは、有効な情報をもっている人といかに知り合い、いかに付き合っていくか、それを考えていこうというわけだ。
しかし、さきほども書いたように、その基本となる“情報”というコトバがいかにも釈然としない。どう扱っていいのかえさえはっきりしない。これでは、どうにも先に進みにくいので、まずはこのPART1で“情報”について、いささか掘り下げて考えてみたい。
で、とりあえず、トータル・ライフ・コミュニティーの周辺にいる人たちに、“情報”についての考え方を聴いてまわった。 まずは、そこから始めよう。